産む力とは?
身体的な力
妊娠・出産を通じて女性の体が大きく変化し、陣痛や分娩の過程で自然に赤ちゃんを押し出す力が備わっています。これは骨盤や子宮、筋肉、ホルモンの働きなど、体全体が協調して発揮される力です。
精神的な力
出産に対する不安や痛みを乗り越えていくための精神的な強さや、母になるための心の準備も「産む力」に含まれます。
潜在能力としての「産む力」
「人間的なお産」などの考え方では、女性が本来持っている潜在的な能力(capability)を最大限に発揮できるようにすることが重要とされています。
ではなぜ産む力が必要なのか。
妊娠期のママにとって
- 健康な体づくりや心の準備のため
妊娠中から産む力を意識し、体調管理や生活習慣を整えることが、出産だけでなく将来の健康にもつながります。
→妊娠中の栄養バランス、体重管理に活かせたり、育児中の離乳食のメニューに活かせたり、家族の健康につながるかも!?
分娩時のママにとって
- 長時間にわたるお産を乗り切るため
出産は数時間から場合によっては1日以上かかることもあり、持久力や筋力、リラックスする力が不可欠です。これらの力が備わっていることで、体力の消耗を抑え、分娩を乗り越えることができます。
→遷延分娩、微弱陣痛の予防
- 自然な出産を支えるため
産む力が発揮されることで、医療的な介入を最小限に抑えることができ母子ともに安全でスムーズな出産に繋がります。
→薬剤の副作用、医療介入の合併症の回避
- 赤ちゃんの「生まれる力」と協調するため
赤ちゃん自身にも「生まれる力」があり、母親の「産む力」と協力して出産が進みます。母子がそれぞれの力を発揮することで、より円滑で安全な出産が実現します。
→赤ちゃんの回旋異常の予防にも
産後のママにとって
- 母親としての自信や主体性を育むため
出産を通じて自分の「産む力」に気づき、発揮することで、母親としての自信や主体性が育まれます。これは産後の育児や人生全体にも良い影響を与えると考えられます。
→周りの意見に惑わされず、子どもにとって一番いい方法を選択していく力
*状況によっては医療介入が必要であり、医療介入がママと赤ちゃんにとって一番安全である場面もあります。このことを選択することも、産む力だと思います。
しかし、現代の妊婦さんたちは仕事で忙しかったり、身近に出産を経験している人が少なくリアルな情報が入って来ない、相談できないなどの理由で、身体的・精神的な”産む力”をはぐくむ機会が少ないように感じます。
また、技術の進化で無痛分娩を予定しているママは、陣痛時の呼吸方法や過ごし方、呼吸法などの前準備の必要性を感じづらく、産む力の必要性をそもそも感じていないかもしれません。(実は無痛分娩こそ、身体の準備が必要だったりします。)
本来、妊娠中のママたち産む力を育てていくのも助産師の役割であると思います。
しかし、コロナの影響で母親学級の規模が縮小され、必要最小限の情報提供になってしまっていたり、助産師不足で妊婦健診で妊娠中のママたちと話す機会が減っている病院もあります。(計測や入院の準備などのアナウンスでは助産師は関わるかのしれませんが、妊婦さんの自分が産むという意識付けに関わることは少ないと感じます。)
現代のママたちに助産師としてどんなアプローチができるか私自身も日々模索中です。
この記事が産む力とは何か、安全なお産につながるよう今からできることは何か、を考えるきっかけになってくれるといいなと思います。
コメント